2016年2月6日土曜日

事始・別館 11  安全情報の収集 ~航空に学ぶ~

安全情報の収集の概念図

ICAOTEMLOSAのサイトから

 航空がどのようにして運航の危険情報を収集しようとしているかを示している図がICAO(国際民間航空機構)のサイトにある(少し前だが)。これはイメージとして医療や他の業種にもわかりやすいのではないかと思う。

運航のイメージ図である。



もちろん、ほとんどが中央の緑の中にある平常運航に分類される。その外側の黄色は何かあった(インシデント)が事故にはならなかった、という運航。外側の赤は人的・物的被害が生じたアクシデントに分類される。ここから安全のためにどういう情報を取り出していくというイメージだ。 (カッコ内の青字は医療現場で相当するもの)

Mandatory incident Reports:事故ではないがレポートを義務づけられているもの(オカレンスレポート?

Voluntary incident Reports:自発的インシデントレポート(インシデントレポート、ヒヤリハットレポート)ANAではECHO(experience can  help others)というレポートがある。ほかの報告フォーマットに入っていないもので、ECHO を活用して報告して、それが紙ベースで運航乗務員には配布される。

LOSA line operation safety audit ライン運航のジャンプシート(パイロットの後ろの席)に訓練を受けた調査員が添乗し、あらかじめ決められた運航のフェーズごとのスレット(エラー誘発要因)とそれに対する乗務員の対処を観察する。サンプリングした便で名前や便名は匿名で統計的に処理(専門の会社)され「運航の傾向」として航空会社にレポートされる。他社の傾向とも比較し、必要なら改善対策をおこなう根拠になる。そして数年後の再調査LOSAで改善を確かめることになる。「運航の健康診断」とか「安全のスナップショット」とか言われている。TEMとともにおこなう。

医療では病棟のラウンドとかに相当するかもしれないが「訓練をうけた第三者」と言う存在がいないし、誰がするのか?という問題が大きい。直接の監督官庁である保健所などは論外だが、「○○医療ナントカ機構」も同じで、実務能力がないため「重箱の隅」状態になるに決まっている。いつも定型的業務でないこともハードルとなる)。

Accident investigation:文字通り事故の調査(事故調査

QARQuality Assurance ReviewFOQA(flight operation quality assurance) 「分類」上は緑のnormal operationになり、インシデントではないがDFDRdigital flight data recorder)の記録などからデータ上、「通常からはみ出した」運航の調査。「平常」からデータ上は離れていることがわかる、しかしそれが「何故か」は当事者でなければ不明の運航上の出来事。必要に応じてデータを示し協力をお願いしたり、システム(例えば運航プラン)に問題があるのでは?という調査をする(医療では阪大の「中央クオリテイマネージメント部」は?)。

・そのほかにASRSがある?(ヒヤリハット?改善提案?
  米国で1976年から報告制度が開始された。しかし提出先が監督官庁FAAであったことからパイロットが反発、殆どレポートが得られなかった。反省した米政府は翌年からNASAAmes研究所にこの業務を委託したところ、年○万件ものレポートが上がってくるようになった。ラインのパイロットばかりでなく個人のパイロットからも数多くレポートされているという。これに対してNASAは「Call back」というレポートを世界中に発信している。
 
★日本では監督官庁が処罰権限を離さず、レポートの結果に関して曖昧な態度をとっているため、うまくいっていない。ただ各社は独自に収集している。レポートに関しては処罰等をしないことが会社のトップから明言されている(SGMさんからのPDFなど)。

★事故調査に関して、日本は「事故調査は将来の安全のために」というICAOの条約(Anex.13)を批准はしているが、捜査との関係を曖昧にしている。運輸安全委員会と刑事捜査の関係でも「覚書」というような文書で捜査を優先することを約束している。運輸安全委員会の改変のときにも「曖昧」なまま過ぎてしまった。(「医療事故調査機関」の問題は目的がもっと疑問・不明瞭な気がする)

2016.2.6.一部修正しました

(講座 番外24「無菌の操縦席」も御覧ください)

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